会長就任に当たって

 

  

清水静海  

 

*帝京大学教授,新算数教育研究会会長 

 

 

 

今年3月の役員会において新算数教育研究会(以下、「研究会」とする。)会長に選出され、翌4月より務めさせていただいております。初代会長中島健三先生以来、杉岡司馬先生、菊地兵一先生、片桐重男先生、杉山吉茂先生、そして前任伊藤説朗先生の後を継ぎ、七代目の会長を拝命しました。諸先輩のこれまでのご尽力に敬意を表しつつ、その遺産を確かに引き継ぎ、算数教育の一層の充実に向けて微力ながら精一杯つとめさせていただくつもりです。皆様の旧倍のご指導、ご鞭撻、ご協力をお願いします。

 

 今年4月の中央教育審議会答申において、教育振興基本計画の第2期計画期間(平成25年度~平成29年度)における教育の基本的な方向が示されています。そこでは、成熟した社会を生き抜く力の育成が喫緊の課題とされ、そのため自立・協働・創造に着目する必要があるとしています。「自立」では「一人一人が多様な個性・能力を伸ばし、充実した人生を主体的に切り開いていくこと」が、「協働」では「個人や社会の多様性を尊重し、それぞれの強みを生かして、ともに支え合い、高め合い、社会に参画すること」が、「創造」では「自立・協働を通じて更なる新たな価値を創造していくこと」がそれぞれ強調されています。これらの期待に算数科の教育はどのように応えていったらよいのでしょうか。これらの期待にしっかりと応えていくことが「研究会」の社会的使命を果たすことになると考えています。この基本的な方向は、昨年度末に実施された小学校学習指導要領実施状況調査や今年度末に実施が予定されている中学校の同調査等に見られますようにすでにその準備が始まっている学習指導要領の次期改訂の柱になるものと思われます。

 

現行学習指導要領において、言語活動の充実と理数教育の充実がその中核におかれたこともあって、算数・数学のもつ言語としての役割をいかして納得や説得のための説明力を高めること、算数・数学の学びを通して育まれる類推・帰納・演繹といった考える方法や分類整理・関連づけといった考える技法を確実に身に付けることへの世の中の期待が一層高まってきています。この期待に確かに応えていくためには、正真正銘の算数・数学との出会いを通してしかないと思っています。

 

機関誌『新しい算数研究』では、過去3年の年間特集テーマを「算数をつくる(平成23年度)、「算数をいかす(平成24年度)」、「算数をたのしむ(今年度)」として、正真正銘の算数・数学との出会いによる算数の学びについて検討してきています。およそ100年前の20世紀初頭に活躍されたドイツの数学者であり数学教育でも造詣が深く今日のICMEの前身をつくられたF.クライン(1849-1925)が生前「公式は黙っているだけで、眠ってはいない。」と述べていたことが名言集にありました。「公式」を「算数」に置き換えてみますと、算数とのおつきあいの仕方が示唆されます。つまり、算数を味方につけるのは算数にはたらきかけなくてはいけないのです。しかし、それは、いつでも可能です。はたらきかければ算数は必ず応えてくれるのです。算数の学びを通して、算数にどのようにはたらきかけたらよいのか、「算数をつくる、いかす、たのしむ」はそのヒントになるものといえます。生涯学習社会の中で、算数・数学とどのようにお付き合いし、それを味方につけていくかの要諦をF.クラインの名言がついていると思います。

 

「研究会」は、小学校の算数科の教育の進展と充実に向けて、これまで同様、新たな知見を生み出し、共有し、世の中へ発信していく使命を担わなくてはならないと思っています。皆様の積極的なかかわりとご支援を心より期待しております。よろしくお願い致します。